ゆるされなかった嘘と夢

元メンヘラの自死遺族だけど幸せになりたい!

新入社員のときに絶望したこと・社会人になってから驚いたこと

年度末の三月あまりにも自分に余裕がなく、「年度末さえ終われば楽になる……四月になれば楽になる……」と唱えながらどうにか乗り切ったものの、四月になってから段違いに忙しくなり頭を抱えている。

まあ、忙しいといっても「忙しい(当社比)」な感じで、休日出勤することはないし、責任を取るような立場でもなく、単にしんどいな~~~という愚痴だ。

 

相変わらず仕事はボロボロで完璧にはほど遠いが、今年で入社五年目に突入した。

ということで、今回は入社したばかりの頃を思い出して書こうと思う。

 

◇配属後最初の土曜日

 

以前、就活について「はじめての内々定で散々悩んだ末に結局就活を続行し9ヶ月粘った一般職志望の結末」という記事で書いたように私はかなり苦戦した。故に内定が取れたときはとてつもなくほっとしたし働けることが嬉しかった。

 

しかし、入社時はひたすら憂鬱だった。

 

自由に使える時間が減る。

社会人としてやっていける気がしない。

怖い先輩がいたらどうしよう。

 

などなど、これからやってくる社会人生活を考えると不安やら緊張やら吐き気やら、マイナスの感情がぐるぐると渦巻いていた。

とはいえ内心ビビりまくっていた反面、いざ四月を迎え新入社員研修が始まれば毎日があっという間に過ぎ、緊張はあるもののただ必死に過ごすしかない訳で、恐れていたほどの憂鬱感はなかった。

 

私が入社してから今に至るまで、最も落ち込んだのは配属後最初の土曜日だ。

 

はじめて月曜~金曜の五日間、自分の配属する部署に通った後。

ようやく訪れた土曜日の午前中に一通りの家事を終え、一週間分の買い物をして帰宅した午後のことだった。

父親が散歩に出掛けたのを見計らって、私は録画していた大好きなアーティストのライブ映像を流しぼーっと座り込んでいた。

音を聞くだけでわくわくするはずの映像を前にして、私はちっとも嬉しくなかった。

 

推し曲が流れても、キラキラする照明を見ていても、普段なら笑ってしまうMCのくだりにも、何とも思わない。続きが見たいと思えない。

生き甲斐だったはずのライブ映像に心が一ミリも動かないことに気づいてびっくりした。

来月のライブだけを心の支えに社会人生活を頑張ろうと思っていたはずだった。社会人になればたくさん遠征もできるしCDもDVDも買い放題だと夢見ていたはずだった。

 

唯一楽しかったコンテンツに魅力を感じられない。

頭の大部分は月曜日から再び始まる日々のことばかりだった。

 

早朝に起きて満員電車に揺られて会社に行って、知らない人ばかりに囲まれて仕事をして、帰りも満員電車に乗って、ご飯を作って洗濯をして風呂掃除して食器を洗って、また翌日に備えて早く眠って……

 

自分の時間はどこにある?

どこにもない。

そんな生活があと何年続く?

わからない。

自分は耐えられる?

もうだめだ、と思った。

 

周りの、普通の家の実家通いの同期は、家に帰ればご飯が待っていて、全部親が家事をやってくれて、自分の時間だってあるのに。

或いは一人暮らしだったら、自分のさじ加減で外食したり洗濯をサボったり、家事のタイミングだって自由にできるのに。

なんで自分だけ?

なんで働き出して時間がないのに父親の分の家事も全部一人でやらなきゃならないの?

 

一度考え出したら一気に不満が溢れ出した。

他人が羨ましくて、自分だけが苦労していると感じた。

全部が嫌になって、ライブ映像の再生を止めた。

 

そしてソファの母親が良く座っていた場所に突っ伏して泣いた。

母が生きていたらこんな思いはしないのに。

母が生きていたら家事だってやってくれたのに。

母が生きていたらもっと楽しく毎日過ごせたのに。

 

今思うとかなり酷いことを考えてビービー泣き続けた。

家事を押しつけようという思考もいかがなものかと思うし、そもそも母親は家政婦でも何でもないし、母が居ようが居まいが会社に行くことが嫌なことに変わりはない。

滅茶苦茶自分勝手だし甘ったれているだけなのだろうが、とにかくあの日、私はとてつもなくしんどくて、父親が出掛けた一時間だけ、久しぶりにぶっ壊れたみたいに泣きまくったのだった。

 

ちなみに、もう一週間経った次の土曜日、同じライブ映像を再生したらめちゃくちゃ楽しかった。

慣れるのも回復もだいぶ早い。

絶望しかなかったあの日の私に、そんなことはないよ、意外に自分の時間って作れるよと教えてあげたい。

 

◇「社会人」像

 

働き始めて一番驚いたのは、私の中の「社会人」像が壊されたこと。

簡単に言うと、社会人ってもっと凄い集団だと思っていた。

 

マナーやルールは全て頭に入っていて守れるのが当たり前。

言葉遣いや身だしなみは完璧。

遅刻やうっかりミスなどは許されない。

失敗したら必ず責任を取らなければならない。

そういうイメージがあった。

 

しかし、入社してみたら全然違った。

敬語がおかしかったり前の日と同じ服を着ていたり無断で遅刻したり時代遅れのセクハラパワハラをする人がいたり学生かよ!みたいな喧嘩をする人がいたりする。

(※私の職場がおかしいだけかもしれない)

 

ギャップが激しくて最初は物凄くびっくりした。

社会人ってもっと完璧じゃなきゃいけないんじゃないの!?と思った。

でも、よく考えたら完璧な人間なんて居る訳がない。

 

一人一人、得意なことも苦手なこともある。

性格も仕事の進め方も考え方も全然違う。性別や年代、育ってきた環境だって違う。

失敗ばかりの時期とノリノリの時期との波が激しい人もいれば、大きな成功はしないけれど淡々と一定の成果を出す人もいれば、常にリーダーシップを取る超人みたいに見える人も、来る日も来る日も足を引っ張ることしかしないように見える人もいる。

最初は混乱してしまったが、時間を重ねる中で、そういうバラバラの人たちが集まってひとつの仕事を一緒にするのが会社なんだな、と腑に落ちた。

 

社会人になってもう一つ驚いたのが、スクールカースト的価値観がないということ。

 

大学まではなんとなく似た価値観、外見、嗜好のグループで固まって他のグループとは積極的に交流しないイメージがあったが、入社後はそういった制約を感じることがなくなった。

「もし同じ学年で同じクラスにいたら一切関わる機会ないんだろうな……」という人たちとにこにこ笑って世間話をしてそこそこの関係をキープするのは新鮮だった。

 

あと、私はあの学生時代特有の「イツメン」的なノリ、常に同じ人と一緒に行動して共有して連れションして……みたいな空気感がとてつもなく苦手なので、ある意味入社後は楽だった。

 

べったりと仲良く過ごす人も勿論いるが、あくまでも各々の自由。

最低限の関わりのみで過ごしても別に良い。

それで浮いたりおかしな目で見られたりする訳でもない。

そういうのは私にとって結構楽だった。

 

◇意外と……

 

思い返せば、一年目は物凄く長く感じた。

誰しもそうなのかもしれないが、あの年の記憶はやけに鮮明に残っている。

目の前の全てが新鮮で、ヘンなことをしていないか不安で、上司や先輩にどう見られているのか怖くて、時間の使い方も一年の見通しも立たず、毎日テンパりながら過ごしていた。

家事も仕事も完璧にしないといけないと思っていたので、すべてが全力だった。

 

今や家事は手抜きに手抜きを重ねて、あの頃不安に思っていたような状況とは全然違う。

学生時代に比べれば少なくなってしまったが、自分の時間も普通に作れている。

仕事も慣れて肩の力が抜けたので、もうあの頃のように毎朝吐き気と闘いながら出社するようなこともなくなった。

 

心底嫌になる瞬間も多々あるし、このままで良いのかという不安も大いにあるが、意外と、社会人生活も悪くはないかなというのが現時点での私の感想だ。

五年目の目標として、今年は平常心を保って仕事をしたい……

とりあえずは、目の前の四月を乗り切ろうと思う。