ゆるされなかった嘘と夢

元メンヘラの自死遺族だけど幸せになりたい!

自死遺族の婚活と家族像について

前回に引き続き婚活について考えたことについて。

 

◇配偶者の自死

 

ネット婚活していた頃、私は23~24歳くらいだった。

かなり若い。

むしろ婚活市場では若すぎる。

だが、若すぎる私に対して、かなり上の年齢の方からメッセージが来ることも多くあった。

 

年の差婚を否定するつもりは全然ないが、単純に年が離れていれば話題も立場も考え方も隔たりがある場合が多いと私は思う。

にもかかわらず、果敢(?)にメッセージをくれる年配の方は多かった。

40代はそこそこ、50代もちらほら、60代の方も当たり前のようにいるのが婚活サイトだ。

ずっと独身だったのか、離婚歴があるのか、深くやりとりした訳でもないので詳しい事情はよく知らない。もしかしたら、配偶者を亡くした方だったのかもしれない。

 

そして気づいた。

配偶者を自死で亡くした父だって、いつか再婚するかもしれない。

婚活したいと思う日がくるのかもしれない。

例えば20代前半の私に何通もメッセージをくれた年配の方のように、婚活サイトで頑張ろうとすることも、ありえないとは言い切れない。

 

不思議な気分だった。

でも考えれば考えるほど、ありえるような気がしてきた。

父は結婚すること、「ちゃんとした家庭」を守ることを何よりも重んじてきた人だ。

母のことで後悔も苦悩もあるだろうけれど、それ以上に強い気持ちがあるのではという感じがする。

そういえば、最近父は急に一人で出掛けるようになった。

今まで放ったらかしだった身だしなみも気にするようになった。

婚活どころか結婚話が立ち上がる可能性も……

 

と、ここまで妄想してから冷静になった。

 

たぶん、母が自死した私より、配偶者を自死で亡くした父のほうが結婚に対する心理的なハードルは高い。

いきなりはそうならないだろう。

でも、そうなったとき私は素直に祝えるのか、祝えないのか、わからないなと思った。

複雑な気分にはなるのかなという気がする。

 

◇家族像

 

婚活していると、いろんな方の結婚に対する考え方、家族に対する考え方に触れる機会があった。

当たり前だが、婚活しているということは結婚したい!という気持ちがあるということ。

理由はどうであれ、新たな家庭を持ちたいという意思がそこにはある。

 

その中で、多く見受けられたのは「自分の生まれ育ったような家庭を持ちたい」という意見だ。

生活していて一番身近にあるのは自分が生まれ育った家庭ということが多い。

結婚像や家族像も、その身近にあった関係性から学んだり、そこからぼんやりと将来を描いたりすることが多いのだろう。

 

「両親がとても仲睦まじく、自分もそんな相手を見つけたいと思った」

「明るい家族に支えられてきたので、今度は自分も明るい家族を支えたいと思った」

「素敵な伴侶を見つけ、素敵な子どもを持ち、素敵な家庭を作ることで家族に恩返ししたいと思った」

 

こんな具合に、結婚や家族といった概念に対してポジティブな思いを綴る言葉をよく見掛けた。

そして、そんな幸せな家族像を目の当たりにする度に、「自分とは違う」という劣等感のような嫌な感情に襲われた。

 

両親の結婚生活とその末路が頭から離れない。

そういう意味では私も同じだ。

一番身近な、自分が生まれ育った家庭に大きく影響を受けている。

 

とても対等とは思えなかった両親の関係性。

自由もなく、じっと耐えるばかりだった母の生活。

やがて表情もなくなり、最後は誰にも看取られず死んでしまった遺体。

母の名前を何度も呼んでうなされる父の声。

八年経った今も、毎月墓石をごしごしと洗う父の背中。

 

どんなに楽しくやりとりしたり話をしたりしても、「結婚」という選択を前にすると断片的な思い出がいつもぐるぐると回るのだ。

そして、結婚に対して幸せなイメージを抱き、家族との思い出を楽しそうに語るような人にどうしても気後れしてしまう。

 

自死遺族の婚活

 

もちろん、どんな家庭で育ったところで、幸せな面もあれば苦しい面もあるだろう。

楽しそうに見えても、表面上ではわからない辛い思いを誰にも言えず抱えている人だっているだろう。

到底幸せに見えなかった私の両親の結婚生活も、当人たちにとってはかけがえのない思い出で、なるべくしてなった結果なのかもしれない。

両親は両親で、私は私で、それぞれの家庭があって、未来がそれらに縛られる訳ではないはずだ。

 

だからいつまでも「自死遺族だから……」だとか「母親は……」だとか言っていても仕方がないと頭ではわかるし、自分だけが苦しいと思い込むのは大きな間違いでもっとずっと大変な思いをしながらも明るく生きる人なんて大勢いるのだろうということもわかる。

ただ、かつて婚活していた頃の私にはそれが難しかったというだけの話だ。

 

自死遺族で婚活をしている方というのはいるのだろうか?

と、ふと思った。

 

そういった場合、どのタイミングで伝えるのだろう。

伝えなくても良いのかな。

でも、きっと家族の話はするだろうし。

ちらっと検索したことがあるが、大抵、配偶者を自死で亡くされたという方の諸々しか出てこなかった。

そういった体験談を見ているとどうしても父の再婚が頭を過ぎるので、私は深く考えるのをやめた。

 

まあ、きっと、「自死遺族だから」とかそういうんじゃなく、婚活も結婚も人それぞれで、唯一無二なんだろうからあれこれ無駄に考えるのはやめにしようと、そう思ったのだった。